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東京地方裁判所 平成6年(ワ)14174号 判決

主文

一  被告は、原告に対し、金三七万円及びこれに対する平成六年七月二八日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、被告の負担とする。

四  この判決は、原告勝訴部分に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一  請求

被告は原告に対し、金二一七万四八八〇円及びこれに対する平成六年七月二八日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

第二  事案の概要

一  原告は、集合住宅の区分所有者全員で構成される管理組合であり、被告は右集合住宅の一階部分25.32平方メートル(部屋番号一〇一、一〇二)の区分所有者であるところ、不払の管理費等とその請求のための訴訟費用、弁護士費用を請求した事案である。

二  争いない事実及び裁判所に顕著な事実

1  原告は規約一三条一二項により管理組合費用等の徴収権限を有し、修繕積立金を含む管理組合費は規約の別表に定めることとされているが(右規約一八条)、被告の区分所有建物に関する別表の定めによる管理費及び修繕積立金(以下「管理費等」という。)の額及びこれについての被告の支払状況は別紙計算書記載のとおりであり、本件訴訟提起時においてその未払残額は一九万四八八〇円であった。

2  原告は平成四年六月一三日、および同年一〇月一〇日に臨時総会を開催し、外装の補修工事を実施すること、その費用として合計金一〇〇〇万円を組合員から徴収すること、その負担割合は本件集合住宅の持分割合に応じて決定すること、被告の負担は金一二八万円であることを決議した。

3  被告が右管理費等を支払わないので、原告は、平成六年四月二日に臨時総会を開催し、被告に対して、延滞金の全額を請求する訴訟を提起すること、その訴訟に際しては、訴訟費用・弁護士費用等の一切の諸経費を被告の負担とすることをそれぞれ組合員総数及び議決権総数の各四分の三以上の賛成をもって決議した。

4  被告は、本件第四回口頭弁論期日において、原告代理人に対して、本件請求額のうち、右1、2の合計額である一四七万四八八〇円と本件の訴状貼用印紙額一七〇〇〇円、使用済送達料一二三〇円の合計額を原告代理人に弁済提供したが、原告代理人は弁護士費用も含めた合計額でないと受領できないとして、その受領を拒否したので、被告は平成六年一一月一日に、右1、2の合計額である一四七万四八八〇円を弁済供託した(東京法務局平成六年度金第七三一七七号)。

三  争点

1  被告の第四回口頭弁論期日における金員の提供が本件における本旨弁済といえるか。

2  本件請求にかかる弁護士費用等を被告に負担させる原告の臨時総会における決議は有効か。その額を七〇万円とすることは相当か。

四  判断

1  本件の被告の弁済供託は、原告の請求する三項を除外したものであることは明らかであるところ、原告の請求1、2、3は、それぞれ、その請求根拠を異に(規約の条項や、それに対応する総会決議は別個である。)し、別個の請求であるから、被告の弁済供託が請求1、2に対応するものであり、その限度で被告は免責されたものといえる。

2  本件訴訟の経過及び弁論の全趣旨に照らして、被告が容易に本件請求1、2の支払いをしないために、原告としては訴訟提起の止むなきにいたったことは明らかであり、これは、その時点において、被告に原告に対する債務不履行があったということになる。そして、訴訟提起のやむなきに至った以上、弁護士に事件の処理を依頼することは相当であり、それに通常要すべき費用は因果関係のある損害ということになる。

そして、原告としては、区分所有者はその共通の利害に関する事項について、その最高意思決定機関を総会とし、管理費の費用の徴収に要する費用も、「共有部分の管理に関する事項」に含まれるものとの見解のもとに、区分所有者及び議決権総数の各四分の三以上の賛成をもって被告に負担させることを議決しているのであるから、その議決自体は有効である。

その額については、議決内容に明示されておらず(甲八)、また、現実に実費としてかかったものではなく、その相当額の範囲において、被告が負担すべきものといえ、その相当額は甲二一および本件事案の性質等に照らして、三六万七六〇〇円であると認められる。

また訴訟費用については、訴訟費用額確定決定によるべきものである。

五  よって、原告の主張は主文の限度で理由があるので、その限度で認容し、訴訟費用の負担については、民事訴訟法八九条、九二条を、仮執行の宣言については同法一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 稻葉重子)

別紙計算書

管理費

入金

入金日

平成3年4月

29,240円

29,240円

4/25

5

29,240円

6

29,240円

7

29,240円

150,000円

8/30

8

29,240円

9

29,240円

10

29,240円

30,000円

10/3

11

29,240円

12

29,240円

53,920円

12/24

平成4年 1

29,240円

29,240円

1/13

2

29,240円

3

29,240円

平成4年4月

39,440円

5

39,440円

58,480円

5/13

6

39,440円

7

39,440円

118,320円

7/23

8

39,440円

9

39,440円

10

39,440円

118,320円

10/9

11

39,440円

12

39,440円

平成5年 1

37,120円

157,760円

1/26

2

37,120円

39,440円

2/17

3

37,120円

平成5年4月

37,120円

78,880円

4/7

5

37,120円

6

37,120円

78,880円

6/8

7

37,120円

8

37,120円

78,880円

8/26

9

37,120円

10

37,120円

11

37,120円

12

37,120円

平成6年 1

37,120円

2

37,120円

3

37,120円

4

37,120円

5

37,120円

6

37,120円

157,760円

6/29

合計 1,374,000円

1,179,120円

残額 194,880円

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